HIVHIV感染症・エイズ(AIDS)とは?感染経路・症状・検査・治療についてHIV

HIV感染症とは?

HIVは、体を細菌やウイルスから守る免疫の働きを弱めるウイルスです。主に「CD4陽性Tリンパ球」という免疫を担う細胞に感染し、治療しないままでいると、少しずつ免疫機能が低下していきます。

HIVに感染していることと、エイズ(AIDS)を発症していることは同じではありません。

HIVに感染しても、すぐにエイズになるわけではありません。HIV感染によって免疫機能が大きく低下し、特定の感染症やがんなどを発症した段階で、エイズと診断されます。

現在は治療が大きく進歩しており、早く見つけて治療を続ければ、エイズの発症を防ぎ、長く健康に生活できるようになっています。


どのように感染する?

HIVの主な感染経路は、次の3つです。

  • 性行為による感染
  • 血液を介した感染
  • 妊娠・出産・授乳による母子感染

性行為では、精液、腟分泌液、血液などに含まれるHIVが、主に性器や肛門などの粘膜や傷口から体内に入ることで感染します。

口の中に傷や出血がある場合などには、オーラルセックスでも感染する可能性があります。

一方、HIVは日常生活では感染しません。

次のような行為で感染することはありません。

  • 握手や会話
  • 同じ食器や飲み物の共用
  • トイレや入浴
  • プール
  • つり革や手すり
  • せきやくしゃみ
  • 軽いキス
  • 蚊に刺されること

ただし、血液が付着する可能性のあるカミソリや歯ブラシの共用は避けましょう。


主な症状

HIVに感染すると、感染から数週間後に、次のような症状が現れることがあります。

  • 発熱
  • 発疹
  • のどの痛み
  • リンパ節の腫れ
  • 強いだるさ
  • 筋肉痛や関節痛

風邪やインフルエンザに似た症状ですが、症状がまったく出ない人もいます。

また、初期症状が自然に治まったあと、数年から十数年にわたって自覚症状のない時期が続くことがあります。

そのため、症状や見た目だけでHIVに感染しているかどうかを判断することはできません。


放置するとどうなる?

治療しないままでいると、体内ではHIVの増殖が続き、少しずつ免疫機能が低下していきます。

免疫機能が低下すると、健康な人では起こりにくい感染症や、一部のがんを発症しやすくなります。

そのうち、エイズの診断基準となる特定の病気を発症した状態が「エイズ」です。

現在は、早期に診断して治療を開始することで、エイズの発症を防げることが多くなっています。


検査方法

HIVに感染しているかどうかは、血液検査で調べます。

一般的には、まずスクリーニング検査を行い、陽性となった場合に確認検査を行って診断を確定します。

HIV検査には、感染していてもまだ検査で陽性にならない「ウインドウ期間」があります。

検査方法によって異なりますが、陽性になる可能性が高くなる時期の目安は、

  • 核酸増幅検査:感染の可能性がある行為から2~3週間ごろ
  • 抗原・抗体同時検査:3週間ごろ
  • 抗体検査:4週間ごろ

です。

ただし、**早い時期に受けた検査が陰性でも、感染を完全に否定できるとは限りません。**感染の可能性がある行為から3か月後に再検査を受け、陰性を確認することが勧められます。

実際に検査を受ける時期や、再検査が必要な時期は、使用する検査方法によって異なるため、検査を受ける施設の案内に従ってください。

また、**感染の可能性がある行為から72時間以内の場合は、検査のタイミングを待たずに医療機関へ相談してください。**感染を予防するための緊急対応「PEP」が検討できる場合があります。詳しくは後述します。

HIV検査は、保健所や自治体の検査施設で、無料・匿名で受けられる場合があります。医療機関でも検査を受けることができます。


治療方法

HIV感染症は、「抗レトロウイルス療法(ART)」という治療を行います。

複数の抗HIV薬を使用して、体内でHIVが増えるのを抑え、免疫機能の低下を防ぎます。

現在は、HIVと診断されたら、免疫機能の状態にかかわらず、できるだけ早く治療を始めることが勧められています。

治療がうまくいくと、血液中のウイルス量を、検査で検出できない程度まで下げることができます。これにより、エイズの発症を防ぎ、長期にわたって健康な生活を続けることが期待できます。

ただし、現在の治療ではHIVを体内から完全に取り除くことはできません。そのため、自己判断で薬を中断せず、治療を継続することが重要です。


HIVに感染すると寿命は短くなる?

以前は、HIV感染症は生命に大きく関わる病気でした。

しかし、現在は治療が大きく進歩しており、早く診断を受け、適切な治療を継続できれば、HIVに感染していない人とほぼ変わらない長期予後が期待できるようになっています。

そのため、HIV感染症では、早期発見と治療の継続が非常に重要です。


パートナーへの感染について―U=Uとは?

HIVの治療をきちんと続け、血液中のウイルス量が検査で検出できない状態を少なくとも6か月以上維持できていれば、性行為によってパートナーにHIVを感染させることはありません。

これを、

U=U(Undetectable=Untransmittable)
「検出されない=性行為では感染しない」

といいます。

ただし、HIVの治療を受けているだけで、必ずU=Uになるわけではありません。薬の飲み忘れや治療の中断によってウイルス量が再び増えると、感染の可能性が戻ることがあります。

また、U=Uが成立していても、梅毒、クラミジア、淋菌感染症など、ほかの性感染症を防ぐことはできません。


妊娠への影響

HIV陽性でも、妊娠・出産を目指すことはできます。

妊娠中に適切な治療を受け、出産方法や出生後の赤ちゃんの管理など、必要な対策を行うことで、赤ちゃんへの感染リスクを非常に低く抑えることができます。

分娩方法は、妊娠後期のウイルス量や医療機関の体制などを考慮して決めます。ウイルス量が十分に抑えられている場合には、経腟分娩が選択肢となることもあります。十分に抑えられていない場合には、予定帝王切開が検討されます。

日本では、母乳による感染を避けるため、授乳は勧められておらず、人工乳が基本です。

妊娠を希望している場合や妊娠が判明した場合には、産婦人科とHIV診療に慣れた医師へ早めに相談することが重要です。

パートナーがHIV陽性の場合にも、治療状況やU=U、必要に応じたPrEPなどを考慮しながら、安全に妊娠を目指す方法を相談できます。


HIV感染を予防する方法

HIV感染予防の基本は、コンドームを正しく使用することです。

コンドームは、HIVだけでなく、梅毒、クラミジア、淋菌感染症など、ほかの性感染症の予防にも役立ちます。

また、HIV感染を予防する方法として、**PrEP(プレップ)PEP(ペップ)**があります。

PrEP(プレップ)とは?

PrEPは、

Pre-Exposure Prophylaxis=曝露前予防

の略で、HIVに感染していない人が、感染する前から予防薬を使用する方法です。

HIV感染リスクの高い性行為が続く人や、HIV陽性のパートナーがいて、ウイルス量が十分に抑えられていることを確認できない場合などに検討されます。

日本では、2024年にHIVの曝露前予防として薬剤が承認されました。

使用を開始する前には、HIVに感染していないことを確認する検査に加え、腎機能やB型肝炎などの確認が必要です。

PrEPを希望する場合には、自己判断で薬を使用せず、対応している医療機関へ相談してください。

PEP(ペップ)とは?

PEPは、

Post-Exposure Prophylaxis=曝露後予防

の略で、HIVに感染した可能性のある行為のあとに、緊急で抗HIV薬を内服して感染を予防する方法です。

できるだけ早く、遅くとも72時間以内に開始する必要があります。

通常は28日間、薬を内服します。

性交渉後のPEPは、日本では未承認の使用方法であり、自費診療となる場合があります。また、どの医療機関でも対応しているわけではありません。

HIVに感染した可能性があり、まだ72時間以内の場合には、検査日を待たずに、PEPに対応できる医療機関へすぐに相談してください。


HIVについて知っておきたいこと

  • HIV感染とエイズは同じではありません
  • HIVに感染していても、すぐにエイズになるわけではありません
  • 握手、食事、トイレ、入浴などの日常生活では感染しません
  • 見た目や症状だけでは、感染しているかどうかは分かりません
  • 現在は治療によって、長く健康に生活できるようになっています
  • U=Uが成立していれば、性行為でHIVを感染させることはありません
  • HIV陽性でも、適切な管理のもとで妊娠・出産を目指せます